中古ThinkPad活用のススメ
私が”ThinkPad沼”にハマった理由

私はThinkPadマニアだ。30年前に初めて所有したノートPCは初代の700Cで、一時期はChromebookに寄り道したものの、十年前にX230でThinkPadに復帰し、以後はT480s、T14、X270、X280など、通算して6台のマシンを愛用してきた。
特に気に入っているのが軽量コンパクトで高性能なXシリーズであり、サラリーマンを辞めて独立した現在でも、従来のXシリーズ3兄弟に加え、オフィスでは作業効率アップのためにThinkPadキーボードⅡも活用している。
さて、”意識高い系人材”といえば「スタバでマック」といったイメージが強いが、ビジネスでは圧倒的にThinkPadがいい。これはビジネスの実務においてはWindowsOSが圧倒的なシェアを有しているということもあるが、私がThinkPadをイチオシする理由は他にもある。
理由①トラックポイントマウス
トラックポイントマウスはキーボード中央にある赤い小さなキャップとその真下にあるスクロールキーと左右のクリックボタンのユニットである。これによってキーボードから手を離さずにPCを操作できるThinkPadの専売特許だ。
このトラックポイントマウスにショートカットキーを組み合わせることで爆速でマシンを操ることができる。生産性の追求こそ企業経営の生命線である零細事業者にとって、ThinkPadのような高速デバイスを使いこなすことはビジネスにおいて大きなアドバンテージとなることは間違いない。

理由②秀逸な操作感のキーボード
一般的なノートパソコンのキーボードはパンタグラフ式という機構を採用しており、操作感がカチッとしている一方で、キーストロークが浅いためキーをパタパタと叩くような操作になりがちで、これが長時間のタイピングだと結構疲れる。
ThinkPadのキーボードはキーストロークが深く、微妙なカーブを描くキーの形状と相まって、キーセンターから多少ずれてタイプしてもきっちり拾ってくれる。まるで自分のタイピングスキルがアップしたようにすら感じ、誇張を抜きにしてタイピングが楽しくて仕方ない。

理由③シンプルで飽きのこないデザイン
最新モデルは別として、これまではThinkPadといえば、どのシリーズの、どのマシンであっても黒一色のボディにトップケースとパームレストにThinkPadのロゴがあしらわれただけというデザインで統一されており、むしろこれがThinkPadブランドのトレードマークとなっている。
飽きのこないシンプルなThinkPadのデザインは、ビジネスツールとして完成された普遍的デザインであるというだけではなく、スピーディな意思決定が求められるビジネスにおいて、機種更新の際に機能の検討のみに集中できる。
そして古いマシンでも周囲に対して余計な引け目などを感じることなく、仕事に集中できるというメリットもある。

狙うなら中古ThinkPad

ビジネスユーザーにとって魅力満載のThinkPadであるが、個人で購入するとなるとやはり価格がネックだ。高性能マシンだから仕方ないのだが、15万円〜30万円の高額な価格帯はフツーのサラリーマンにとって、おいそれと手が出るレベルではない。
そこで筆者がオススメしたいのが、程度の良い中古マシンを楽天市場やアマゾンでゲットする方法。ThinkPadは前述のとおり法人のビジネスユースがメインの機体なので、程度の良い格安の中古マシンがまとめて放出されることがある。
さらに元々のスペックが高い上に、古臭さを感じさせないデザインもあって、程度さえ良ければ新品に遜色ない中古マシンをリーズナブルに入手できる。2017年頃までのモデルであればカスタマイズもしやすいので、多少のリビルトは自前でできてしまうところも中古マシンをオススメする理由だ。
そこで今回は筆者が中古で購入したX230のリビルトについてご紹介したい。もしこの記事が読者のご参考になれば嬉しい限りである。
LTE化などのカスタマイズのためにバラバラに分解された筆者のX270。一方でThinkPadシリーズも年々ウルトラブック化が進み、X280以降はメモリ交換もままならないほどにカスタマイズ性がスポイルされてしまったのは残念。

事前チェック
筆者のX230について

X230は2013年発売で、当時の新品価格は15〜18万円くらいだったが、筆者は2017年に、CPUがintelのCore-i5(第3世代)、メモリ(RAM)は8GB、ストレージは110GBのSSD仕様のモデルをたった3万3千円で購入した。
たしかに現在のビジネスシーンにおいてはスペック不足の感は否めないが、メモリが8GBあればモバイルモニターも使えるし、例えばGoogle WorkspaceのようなSaaSを活用することで、問題なくタスクをこなすことができる。
購入時のコンディション

機能や動作は全く問題無く、むしろWindowsOSのPCにしてはあっという間に起動するなど、X230の予想外のメリットも発見できたが、クラムシェル内側の外装については傷みが目立つ。
メルカリなどの個人出品と違い、アマゾンや楽天市場など日々大量の品数を取り扱うECサイトでは、いちいち現物の写真を掲載するケースは少ないためアタリ・ハズレは仕方ないが、どうせならできるだけ美品が欲しい・・・と考えるのが人の常。
そこで今回はこれら気になる点について可能な限りリビルトで対応してみたい。まずは主な補修ポイントをピックアップしてゆく。
補修ポイント① パームレストの割れ

パームレストの左角に亀裂が入っている。これはこの部分の真下にカードスロットを入れる空洞があるため強度が弱く、このシリーズに限らずThinkPad全般的に割れやすい傾向がある。
他人にマシンをみせびらかすワケではないので、とりあえず接着剤で固定しておいてもいいが、亀裂が拡大すると厄介なので交換する。
補修ポイント② キーボードのテカリ

ThinkPadのウリはキーボードの秀逸なタッチ感だが、全体的にテカリが出ており、タイピング時に指先に引っかかるようになってきた。
単なる皮脂汚れなら中性洗剤を含ませた布で軽く拭けば操作感が改善するが、これはキートップの摩耗によるテカリなのでキーボードユニットごと交換してみたい。
X230のキーボードってThinkPadキーボードⅡに似てない?
筆者のX280とThinkPadキーボードⅡ。全幅は同じだが、キーボードを比べると明らかにThinkPadキーボードⅡの方が広くタイピングしやすい。
さらにThinkPadキーボードⅡは薄型化する必要が無いためキーストロークが深く、タイピングの心地よさはThinkPadシリーズの中でも間違いなくトップクラス。
実はX230のキーボードはキーのサイズ、ピッチ、ストロークの深さがThinkPadキーボードⅡに酷似しており、タイピングのフィーリングも秀逸なので、リビルト後は原稿書きマシンとして使い続けたい。

補修ポイント③ ベゼルカバーの欠損

液晶ディスプレイを固定するベゼルカバーの両角が欠損している。恐らく前オーナーかショップの素人スタッフが液晶交換しようとして失敗したのかもしれない(ベゼルカバーは下側から外すのが鉄則だ)。
機能的には問題ないが、見た目が貧乏くさいのでこれも交換する。
補修ポイント④ 視野角の狭い液晶ディスプレイ

液晶は低スペックのTN型液晶で視野角が狭い。例えば大型ディスプレイと外付けキーボードをつなぎ、ノートPCをサブディスプレイとして斜めにセットすると、画面が青白くなって視認性が悪くなる。
X230は旧モデルゆえに解像度アップはあまり期待できないが、視野角と画質改善のためIPS(フルHD)に交換する。
補修ポイント⑤ トップケースのガタつき

トップケースを固定しているヒンジがガタついている。
ヒンジが経年劣化してトップケースをホールドできなくなったらヒンジ本体を交換しなければならないが、これはヒンジの取り付け部分の緩みのようだ。ネジの増し締めで解決できるかも。ついでにむき出しのネジも隠したい。
補修ポイント⑥ バッテリー上がり

中古で購入したノートPCのバッテリーはたいていヘタっていて要交換であることが多い。一方で最近のノートPCはバッテリー内蔵タイプが多く、一般的なユーザーにとってバッテリー交換を有償でもってショップに依頼せざる得ないのが悩みのタネ。
しかしX270までのThinkPadは外部バッテリー(X270は内部と外部のツインバッテリー)なので、社外品の格安バッテリーを利用することでリーズナブルに交換することが可能だ。
部品の調達
AliExpressを使ってみる

リビルトに必要なパーツは、パームレスト、キーボードユニット、IPSフルHDディスプレイ、ベゼルカバー、外付けバッテリーなどだが、これをそのままAmazonで注文すると軽く2万円オーバーの出費となる。
そこで今回はAliExpressを利用してみる。バッテリーのみAmazonで購入したものの、半額以下で交換パーツを調達することができた。もっともAliExpressには悪質な出品者もいるため、バイヤーズ・プロテクション表示のある業者から購入したい。
品質やデリバリーは問題なし

AliExpressから納品されたリビルトパーツ達。
かつて中国製品は粗悪品の代名詞だったが、X230に仮組みしてみるとおかしな歪みやサイズ違いなどなく、しっかりとした品質で安心した。ベゼルに若干の成形ムラが見られたものの、以後の取り付け作業において問題は発生せず。
中国本土から船便でデリバリーされるため、だいたい3週間ほどの納期を要するが、梱包はしっかりとされており、IPS液晶など割れやすい部品もエアマットで何重にも丁寧に保護されていた。AliExpressは結構使えるかも・・・。

X230をリビルトする
電源を落とす

X230の電源は外付けバッテリーだけなので、ボトムケースのバッテリー両サイドのノッチを左右にスライドさせて、バッテリーを引き抜けばOK(X270やX280などの内蔵バッテリーモデルはBIOS画面から電力供給をシャットダウンする必要がある)。
バッテリーを外すと奥側にSIMカードを挿すスロットが見える(緑色の基盤の右側)。もしLTEアンテナとLTEモジュールが標準装備であれば、MVNOのSIMを挿すだけでWifiやテザリングなしでもネット接続可能だ。
キーボードとパームレストの交換
パームレストを固定しているネジを外す

パームレストはメモリカードスロット下の2ヶ所のネジで固定されている。この時代のThinkPadはネジ穴ごとに何を固定するネジなのかアイコンが表示されているので、カスタマイズの際にはとても助かる。

キーボード用のネジも外す
ついでにキーボードを固定しているネジも外してしまう。裏面中央のメモリスロットのカバー上の2ヶ所(中央と右下)だ。
せっかくなので裏カバーを外してみると、4GBのメモリカード2枚が挿入されたメモリカードスロットが現れた。
デュアルディスプレイで簡単な事務作業をするのであればメモリは8GBもあれば充分なので、今回は特にメモリ増設は行わない。
旧いキーボードを取り外す
キーボード本体の取り外し方

キーボードを手前から奥へ向かって押し付けるようにすると手間側に数ミリの隙間ができるので、キーボードの4本のツメをパームレスト下からくぐらせて外す。力任せに作業してツメを折ってしまうとマズイので、忍耐強く慎重に進めよう。
キーボードのコネクターを外す

キーボードのコネクタには脱落防止用のストッパーなどはなく、端子を指でつかんで垂直に引き抜くだけ。なおコードをつかんで引っ張ると断線するので要注意。
マザーボードが防水シートで保護されているせいもあるが、X230の内部は意外とシンプル。紫と白色のコネクタがトラックポイント用、その上の右斜を向いた縦長のコネクタがキーボード用。

旧いパームレストを取り外す
トラックパッドのコネクターを外す

トラックパッドのコネクター(紫と白色の端子)には黒いゲート状の脱落防止ストッパーがあるので、これを上方へハネ上げ、ストッパーを解除してからコネクターを外す。
なおこのコネクターは端子のオスとメスがカチッと噛み合うような構造ではないので、引き抜く前に接続部分の写真を撮っておいた方が、組み上げる際に迷わずに済む。
旧いパームレストを取り外す

パームレスト本体はスポーツカーのボンネットを開けるような感じで、奥から手前にクルリと半回転させて取り外す。なおパームレストの手前側には固定用のツメがあり、折ってしまわないようにやさしく慎重に作業する。
LTE用のアンテナ線(青色と赤色のコード)が標準装備だった。あとはLTEモジュールを取り付け(中央のグレーの空きトレイ)、バッテリー裏に格安SIMを挿入することで、いつでもどこでもネット接続可能となる。

新しいパームレストを取り付ける
トラックパッドを新しいパームレストに移植する

トラックパッドはそのまま使えそうなので、旧いパームレスト(写真上)から新しいパームレスト(写真下)に移植する。もし指紋認証センサーが装備されているのであれば、同時にセンサーユニットも移植することになる。
移植後のトラックパッド

トラックパッドの移植は4本のネジを脱着するだけでOK。ネジを強く締め付けてしまう前に、トラックパッドがスムーズに動作するか確認しておく。
トラックパッドの支点は非常に小さなプラスチックのパーツなので、取り付け位置がズレたままネジを締め込むとパーツが折れてしまうため、焦らず丁寧に作業してゆこう。
新しいパームレストを取り付ける

取り外しとは逆の手順で、手前側のツメを合わせてから奥側へパームレストを本体へ被せ、裏側から2本のネジで固定する。
トラックパッドとキーボードのコネクタを接続する

パームレストをパソコン本体に取り付けたら、トラックパッドのコネクター(白と紫色)を接続する。
上から優しく押し込むだけで接続できるが、スムーズに入らない時は無理せずにいったんコネクターを外し、予めスマホで撮影した写真などで位置確認を行いたい。
引き続きキーボードの取り付けを行うため、キーボード用のコネクター(斜め右を向いた縦長のコネクター)も接続してしまおう。
新しいキーボードを取り付ける

新しいキーボードを取り付ける。キーボードは奥側に幅広のツメが2ヶ所、手前側に小さなツメが4ヶ所あるが、キーボード本体をホールドするのは奥側の2本のツメだ。
そこでキーボードの奥側を斜め下に傾けてパソコン本体に差し込み、軽く本体に押し付けながらキーボードの手前側をゆっくりと下ろしてパームレスト下に4本のツメをくぐらせる。最後に裏面の2本のネジでキーボードを固定して作業完了。
液晶ディスプレイとベゼルカバーの交換
旧いベゼルカバーを取り外す

X230のベゼルカバーは上部がハメ込み式のツメ、下部がネジでもってトップケースに固定されている。まずはヒンジの斜め上にある左右のネジカバーとネジを外す。

ネジカバーの外しかた
ネジカバーは両面テープでネジの頭に貼り付けられているだけなので、小さなマイナスドライバーで簡単にはがれる。

ツメの外しかた
ネジを外したら、ハメ込み式のツメをはがす。ベゼルカバーの下側の接着が緩そうなポイントを探し、粘土ヘラやギターのピックなどを刺しこんでジワジワはがしてゆく。
旧い液晶ディスプレイを取り外す

X230の液晶ディスプレイは四隅をネジでトップケースに固定されているので、まず4本のネジを外す。ちなみに画面周囲の赤色と青色の配線がトップケース裏に貼られたLTE通信用アンテナとPC本体側のLTEモジュールを繋ぐコードだ。
ネジを外した直後に液晶画面がパタンと前に倒れ、交換したばかりのキーボードを傷つけないように、また液晶の破損防止のためにも、キーボードの上にダンボールを敷いて作業しよう。

液晶ディスプレイのコネクターを外す

液晶ディスプレイのコネクターは保護シールで覆われている。粘着力が落ちないよう注意しながら保護シールをはがし、液晶ディスプレイの面と水平方向にコネクターをスッと引き抜く。
新しい液晶ディスプレイを取り付ける
新しい液晶ディスプレイにコネクターを接続する

新しいIPS液晶ディスプレイをいったんキーボード上に寝かせた状態でコネクターを接続し、保護シールで端子を固定しておく。
予想通りヒンジをトップケースに取り付けるネジが緩んでいたので、増し締めしておく。これでクラムシェルを開閉する際に、トップケースがグラグラすることはない。
液晶ディスプレイをトップケースに装着する

新しい液晶ディスプレイを4ヶ所のネジでトップケースに固定したら、ディスプレイ表面の保護フィルムを剥がす。誤って先にベゼルカバーを取り付けてしまったら保護フィルムを剥がせなくなるので忘れずに行いたい。
新しいベゼルカバーを取り付ける

新品のベゼルカバーを液晶ディスプレイの上から装着する。
トップケースの上部から下部へ向かってパチンパチンとツメをハメ込んでゆくが、事前にツメが噛み合う位置をチェックしてから作業すると誤ってツメを折ってしまうリスクを避けることができるだろう。
ベゼルカバーはレノボの純正品ではないため、額の下側に色ムラ(成形ムラ?)があったのが残念だが、それでも予想以上にきれいに仕上がって大満足。
ネジカバーを取り付ける


2ヶ所のネジを締めてベゼルをトップケースに固定し、ネジカバーを取り付けたら交換完了。
ネジカバーは裏の両面テープでもってネジの頭に貼り付けるだけ。小さいので紛失しないようにデスク周りを片付けてから作業する。小さなパーツだが、あるのとないのでは大きく印象が変わってくるので大事だ。
社外バッテリーへの交換

バッテリーは社外品の6セルタイプに交換した。純正の4セルよりPC本体の厚みと重量が増してしまうが、バッテリーのもちは単純計算で1.5倍になる。
ブログの執筆程度であれば連続して6~7時間程度はバッテリー駆動のみでの作業が可能だ。
X230リビルトのまとめ
リビルト後の出来栄えチェック

無事リビルトの完了した我がX230。当初懸念していた品質不良によるネジ穴やツメ穴のズレなどなく、きれいに組み上がって一安心。
X230はメンテナンス性が良かった時代のマシンだけあって、全体を通して順調に作業できた。
液晶画面の画質比較

交換前のTN液晶(左側)と交換後のIPS液晶(右側)を比較してみた。
斜めから見ると一目瞭然だが、画面の透明度や発色の鮮明さ、そして視野角が全然違う。
全体のイメージ比較

外観チェック。左がリビルト前、右がリビルト後。
今回はトップケースとボトムケース以外、総とっかえとなったが、パーツの欠損や割れ、経年劣化によるヤレやテカリなどが見事に無くなって、全体的に引き締まった印象。
なお筆者のX230はWindows10なので、2025年10月には無償アプデが終了してしまい、以後はそのままの状態でWebに接続することはセキュリティ上のリスクが伴うため、今後はChromeOSに載せ替えることも検討する必要がある。
現在は筆者の娘のタイピング練習専用機となっているが、いずれChromebook化の顛末記などもブログにアップできればと考えているので乞うご期待。