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時間が経つのも忘れて物事に没頭する状態
フロー状態とは米国クレアモント大学のチクセントミハイ教授が提唱した理論で、時間の経過を忘れるくらいに物事に没頭している状態をいい、仕事やスポーツ、芸術活動、勉強などあらゆるシーンで起こりうるそうだ。
ただしフロー状態に入るにはいくつか条件があり、チクセントミハイ教授は、その主なものとして、①自分の能力に見合った課題、②明確な目標、③集中力を妨げる要因の少ない環境などを挙げている。
フロー状態を阻害する職場のワースト要因
フロー状態を獲得すると、集中力や想像力が増して生産性がアップし、幸福感や充実感を得ることもできるので、仕事の生産性も爆上がりする。しかし多くの日本の職場では、フロー状態を妨げる無神経な要因があちこちに存在している。
そして個人的には、不意にかかってくる、要領を得ない、ダラダラと永遠に続きそうな無駄な長電話こそ、その最たるものではないかと考えているる。
電話くらい生産性の低いものはない
メールより電話という人は気づいていない
例えば緊急性のない宛先不明の社内の問い合わせ電話。とりあえず誰でもいいからこっちの要件を放り込んでおけばいい、といった無責任な態度のおかげで、こっちは仕事を中断して、ソイツの尻拭いに時間を浪費しなければならなくなる。
こういったケースでは、電話を受けた者が要件をメモし、復唱して確認し、部内の担当者を探して、要件の内容を取り次ぐといった余計な手間が生じる。もし最初から人事部宛に簡潔明瞭なメールをもらえたら、こうはならない。
いまどき営業電話はかえって逆効果になる
もうひとつあげるとすれば、資料をダウンロードしたり、求人を出したりする度にかかってくるしつこい営業電話。「お忙しいところ申し訳ありません。」と前置きしてくるものの、こちらの都合などお構いなしに突然電話をかけてきて、興味の無い話を一方的にまくしたてる。
驚くべきはWebのサブスクサービスの事業者からの営業電話。本契約に付随したオプションサービスの売り込みだが、そんなものはサービスを検討する際に、その会社のWebサイトをみて検討済だ。営業電話で何度もプッシュしたからといって、契約する動機にはならない。
電話はあくまでも緊急時の連絡手段
電話応対が嫌だといっている訳じゃない
以前勤めていたある職場では、電話や立ち話が好きな人が多い風土だったせいか、とにかく社内コミュニケーションの効率が悪かった。こういうことを言うと「社員応対もオマエラの仕事だろう。」と食ってかかる人もいそうだが、直接話したくないと言っているのではない。
あまりにも生産性の低い緩慢なコミュニケーションのやり方を改めませんか?と言っているのだ。こちらとて必要なコミュニケーションはしっかり行いたい。しかし突発的で、論点が不明瞭で、仲間にシェアしづらい旧態依然としたコミュニケーションに辟易しているのだ。
ルーティンのやりとりはメールで十分!
そこでその職場では問い合わせの多い事項は予め社内のポータルサイトに掲示しておき、各部門長には人事部宛の問い合わせや依頼は原則として5W2Hを簡潔にまとめたメールで行い、緊急時以外はなんでもかんでも電話してこないように要請した。
古参の社員達からは相当に反感を買った(彼らは事務の女性と話すキッカケが欲しかったのだ…)が、課題解決の進捗や処理案件の数とスピード、ヌケ・モレの少なさなど、結果的にその当時は私の部署(人事部)が社内で一番生産性が高かったと自負している。
電話は時代遅れのコミュニケーション
グループウェアのキホンはテキストだ
極論すれば現代のビジネスにおいて電話はすでに時代遅れのコミュニケーションツールである。ビジネスが複雑化し、多様化し、実行スピードが求められる今の時代は、テキストベースのコミュニケーションがデフォルトであるべきだ。
なぜならテキストベースすなわちメールやチャットなどでのコミュニケーションには電話にはない次のようなたくさんのメリットがあるからだ。
メリットその① 効率よく情報を伝達できる
〜電話では相手の時間を拘束してしまうが、メールなら情報の送り手と受け手がそれぞれ都合の良い時に対応することができる(すぐメールを見ろ!は誤用)。
メリットその② 効率よく記録を保存できる
〜電話では会話の内容をメモし、忘れないようにパソコンや手帳に転記する作業が生じるが、メールはそのまま保存しておくだけでいつでも見返すことができる。
メリットその③ 効率よく情報を共有できる
〜部署共有のメアドを設置することで、案件ごとにそれぞれの担当者がすぐに対応できる。またCCや転送機能を活用すればスピーディに関係者に情報共有できる。
メリットその④ 効率よく情報を検索できる
〜電話でありがちなのが「言った」「聞いてない」の不毛な押し問答。メールなら送受信の履歴を検索すれば一発で過去のやりとりをチェックすることができる。
メリットその⑤ 情報のヌケやモレを防止できる
〜定例的な確認事項や連絡事項であれば、事前に内容をテンプレ化しておくことで、確認モレや連絡モレを防ぐことができる。
テキストとオーラルを使い分けよう
今どきは部外者とはメールで、チームメンバーとはチャットで適宜コミュニケートし、複雑な案件やセンシティブな内容の時は、スケジューラで互いの予定を調整してから、Webミーティングを行って、細かな意思疎通を図るのがセオリーだ。
テキストでのやりとりは業務タスクの処理効率が高いが、ヒトを扱う商売は対話すべき時はしっかり話し合って、相手の納得感に配慮しないとかえって炎上するリスクもある。なおWebミーティングなら録画もできるし、AIを使って自動的に議事録を生成することができる。
電話にこだわる人は生産性が低い
受け手責任のコミュニケーションは害悪
残念ながらいくらテキストベースのコミュニケーションのメリットを説明しても、電話コミュニケーションに固執する人達がいる。特に地方の中小事業者になるほど、テキストベースのコミュニケーションを軽視(軽蔑)しがちな傾向があるのでは?と感じている。
彼らの言い分は「メールは事務的だ。電話でなければ微妙なニュアンスが伝わらない。」というものだが、グローバル時代に日本特有の「空気を読む」などといった、受け手の気遣いに期待するようなコミュニケーションはミスリードを招き生産性を下げるだけだ。
生産性の低い習慣から創発は生まれない
あるいは「創発は雑談から生まれるものだ。」などという人もいた。しかし日常的なルーチンすらテキパキと捌けないような人達が集まってグダグダ雑談したところで、しょせんは何の付加価値も生まない自己満足的なパフォーマンスに過ぎないというのが私の考え。
むしろさっさとテキストコミュニケーションに切り替え、フロー状態を実現しやすい職場環境と風土を醸成した方がより生産的だろう。そんな弊社では代表電話を廃止した。集客チャンスは減るが、弊社をご指名頂いたお客様にはコストダウンで生じた差分を価格で還元している。
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