
日本人の会議下手はもはや絶望的
ニュース記事の要旨
デンマークではジョブ型雇用で採用されたプロフェッショナル集団が、デンマーク流の人間関係と社会性にもとづき、生産的な会議を行っている。デンマーク流の人間関係とは、互いの時間を尊重してタイムパフォーマンスを高め、上司が部下達の発言を活性化するような職場関係を構築することであり、社会性とは、①課題解決のために率直に議論する、②議論と個人を切り離す、③自分に関係の無い論点は妥協する、④傾聴の姿勢を大切にする、の4つの要素をいう。(紹介記事の要旨)
日本の会議は目的がズレている…
日本人の会議下手はよく知られている。ゴールの見えない長時間のダラダラ会議などその最たるものだが、他にも結論ありきの予定調和、偉い人の独演会、二度と読み返されることのない形骸化した議事録など、ダメ会議の例をあげるときりがない。
本来、会議とは、特定の目的をもったメンバーが会して議論し、何らかの意思決定を行って成果物を生み出すものだが、日本の会議の多くは、メンバーが集まること自体が目的と化してしまっているように感じる。
ファシリテーションを学ぼう
デンマーク式会議法はファシリテーションとよく似ている。日本ファシリテーション協会によると、生産的な会議とは、ファシリテーターが中立的な立場でもって、冒頭で会議の目的とゴールを明らかにした上で、次のステップで進行する。
- 話しやすい場の雰囲気づくり
- 意見の発散(遮らない、非難しない)
- 意見の傾聴(相手を受けとめる)
- 論点の構造化(無用な対立解消)
- 合意形成(全員が納得した状態)
ファシリテーションの目的は、一定の話し合いのルールのもと、全ての出席者がきちんと話し合いに参加し、安易に多数決に逃避することなく、メンバー全員が納得するまでとことん話し合った上で、合理的な結論を導き出すことだとしている。
生産的な会議のポイント
会議の生産性を上げる7つのポイント
私もこれまでに数え切れないくらいの会議を経験した。私の場合は組織改革や業務プロセス改善のために関係者の意見を集約したり、改善案について承認をもらったり、施策について説明を行ったりというように、目的とゴールが明確な会議がほとんどだった。
それでも他の人が主催する会議に招聘された時は「これは何の時間?」などと思ってしまうような場面も多々あった。酷い例だと、出席者全員に議事を板書させる前時代的な組織もあった。そこで私なりに行き着いた生産的な会議を行うためのポイントを紹介したい。
- 目的と議題を事前に周知する
事前にメンバーが議論の準備ができるように、会議のスケジュールと一緒に会議の目的と議題をメンバーに周知する - 適切なメンバーを選定する
会議メンバーは主催者の個人的好みではなく、事案の担当者や知見を有する者、議論に決定権を有する者を選定する - ファシリテーターを選任する
中立の立場でメンバー全員に議論の参加を促し、議論の脱線や感情的対立を防ぎ、合意形成に導く進行役を選任する - ホワイトボードを活用する
ホワイトボードに議論を可視化しながら進行することで、議論の脱線や蒸し返し、会議室隅での局地戦を防止できる - 発言の内容に注目する
「誰が言っているのか?」ではなく「何を言っているのか?」に注目して議論することで建設的に合意形成ができる - 発言録ではなく議事録をとる
発言録(個々の発言記録)ではなく、議題と議題に対する意見および議論の結果を簡潔にまとめた議事録を作成する - 会議後のTODOを明確にする
会議終了までに次回の会議日程とそれまでの宿題をTODOに落とし込み、関係するメンバーに共有しておく
日本の会議は居場所を確認する儀式
いまだに鶴の一声で唐突に会議が招集され、偉い人がひらすら喋り、他の参加者はウンウンと頷くだけ、無味乾燥な議事録はキャビネットへ直行…といった前時代的な会議をしている職場は少なくない。
権威に弱く、場の雰囲気に流されやすい多くの日本人にとって、会議とは自分がそのコミュニティに所属していることを確認し、実感するための悲哀に満ちた儀式なのかもしれない。ゆえに成果よりも調和を重んじるかったるい会議になってしまうのだろう。
沈黙は二度と呼ばれない…が外資流
また日本には昔から「寄らば大樹の陰」「長いものには巻かれろ」といったことわざがある。処世の知恵としてはわからなくもないが、そういう態度で会議に臨むのは、むしろ話し合いの生産性を阻害する行為とみなされる恐れがあるため、止めた方がよいのではないかと思う。
これまで日本のサラリーマンにとって美徳とされてきた職場の和、協調性、謙虚さという倫理観は、裏を返せば問題意識と自立性の欠如であり、リスクテイクより保身優先の態度である。外資系企業であれば、二度と会議に呼ばれないどころか、リストラされるかもしれない。
会議のテクニックを研鑽してVUCA時代を乗り切る
複雑化の時代、個人プレーには限界がある
昨今は転職や副業の増加によって雇用流動化が進む一方で、事業のライフサイクルが短命化しているので、年功序列を前提とした職場の秩序や人間関係は薄れてゆくだろう。社歴に関係なく、職責を担う能力に応じてポストが再配分される可能性もある。
個々のビジネスパースンに対し、短期間で具体的な成果を上げるよう会社からのプレッシャーも強まるかもしれない。しかし我々凡人が過酷なステージを個人プレーでクリアし続けるのは至難の業である。
文化や価値観の違いはテクニックで克服せよ
ゆえに職場のメンバーがそれぞれの特技を持ち寄り、チームで成果をあげてゆくことが不可欠なのだが、これを有効に機能させるには、会議を生産的に運営できるスキルが必須となる。
だからといって、デンマーク式の人間関係や社会性を身に着けろと言われても、我々日本人とは気質や文化が違うので一朝一夕でできるはずがない。そこでファシリテーション技術を研鑽しよう。技術マターであれば、トレーニング次第ですぐ活用できるようになるはずだ。
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平石直之さんといえば、アベプラでの卓越した司会テクニックが印象的。出演者の感情やスタジオの雰囲気に流されることなく、議論のプロセスをコントロールしつつ、論点を整理しながら、限られた時間の中で、話し合いを上手にゴールへ導いてゆくスキルは秀逸。我々ビジネスパースンも、平石さんのファシリテーション技術から学ぶべき点は大いにありそうだ。

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