
精神疾患による労災認定が増加中
近年、職場ストレスに起因する精神疾患の労災認定件数が急増しており、2022年度には710人、さらに2023年度には883件に達し、過去最多を更新中です。特に30〜40代での発症が増加し、男性では発症時年齢が働き盛りの40代に集中しているようです。
これは職場環境や働き方の変化が大きく影響していると考えられ、特にハラスメントや過重労働が蔓延している職場では、精神疾患による労災認定が多い傾向があります。しかし残念ながら、現在のところメンタルヘルス対策に取り組む企業は約6割にとどまっています。
ストレスチェックテストとは?
ストレスチェック制度は、改正労働安全衛生法により、2015年12月から施行されました。従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防止することを目的として、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対し、年1回の定期的な実施が義務付けられています。
なお、ストレスチェックテストの結果が労働者の人事評価に不利に影響しないように、使用者側はテストの回答内容や診断結果を知ることはできません。診断は医師や精神保健福祉士などが行い、その結果は使用者を介さず、実施機関から個々の従業員に直接通知されます。
職場のメンタル不調を放置すると…
メンタル不調による労災認定が頻発すると、翌年度の労災保険料率がアップするのみならず、長期休業者や離職者が増えたり、出勤している者が欠員の穴埋めをしなければならないなど、他の労働者の負担が増し、職場のモラールや労働生産性が低下します。
最悪の場合は、労働基準監督署から改善指導を受け、それでも改善が見られない場合には、インターネット上で企業名を公表されることもあり、有能な人材が寄り付かなくなるばかりか、BtoCビジネスの場合には消費者の不買運動に発展するリスクすらあります。
今回の法改正の経緯と背景
現行の制度では、従業員が常時50人未満の場合、ストレスチェックテストの実施は任意です。しかし50人を境に小規模事業者のストレスチェックテストの実施率が6%と極端に低いことから、政府は全事業所に対してストレスチェックテストを義務化することを表明しました。
その後、2025年3月の国会において政府は労働安全衛生法の改正を決定し、法案が承認されると、2028年までに従業員数に関わらず、全ての事業場でストレスチェックテストの実施が義務化されますので、もし可能なら定期健康診断にあわせて早期の実施が望ましいでしょう。
法改正のポイントと改正後の展望
改正労働安全衛生法では、小規模事業場でも実施しやすいよう、地域産業保健センターなどの活用が可能となり、プライバシーへの配慮も強化されます。また労働者健康安全機構による、ストレスチェックテスト費用の助成などの支援サービスも行われる予定です。
今回の法改正によって、全ての事業者にストレスチェックテストが義務化されることにより、全国的に職場におけるメンタルヘルス対策が強化され、就労環境の改善や労働者の心理的負担軽減、ひいては労働生産性向上や離職率低下にもつながることが期待されています。
労働安全衛生は人事管理の最低要件
ストレスチェックテストの実施は事業者の義務ですが、テストの受検は労働者の任意です。一方でメンタル不調は、自覚症状が無くても進行することがありますので、使用者は制度の趣旨や高ストレス判定後のフォローについて、従業員に周知しておくことが望ましいと考えます。
人事コンサル界隈では、モチベーションやエンゲージメントといったキーワードが流行っていますが、それらの大前提となるのが労働法令の遵守と職場の安全衛生の確立です。ゆえにストレスチェックテストは人事管理の最低要件と捉えて、自社なりの実施体制を構築しましょう。
RWC合同会社/RWC社労士事務所のサービスを詳しく知りたい

🍀無料カウンセリングを受ける🍀
悩んだらまずはお気軽にお問い合わせください。