
2025年4月から、在職老齢年金の支給停止調整額が現行の50万円から51万円に、また高年齢雇用継続給付を併給した時に標準報酬月額に乗じる減額率が、現行の6%から4%にそれぞれ改定されます。なお在職老齢年金とは、収入のある人の老齢厚生年金を調整する制度をいいます。
在職老齢年金の支給停止調整額とは
在職老齢年金とは、老齢厚生年金の受給者が、一定以上の給与を受け取る場合に、老齢厚生年金を減額する制度です。制度の趣旨は、老後の生活保障である老齢厚生年金を、老後も引き続き一定の収入を得られる人にまで、満額支給するのは適切ではないというものです。
標準報酬月額+直近一年間の平均標準賞与額+老齢厚生年金の額が、支給停止調整額である51万円を超えた場合に、超えた額の1/2に相当する額を、老齢厚生年金から減額する仕組みになっており、支給停止調整額を引き上げることで、高齢者の労働参加を促す狙いがあります。
雇用保険と老齢厚生年金の併給調整
今年4月から、全ての事業者に対して65歳までの雇用確保措置が義務付けられたことから、60歳〜65歳の高齢者を雇用継続もしくは再雇用した場合に支給される、高年齢雇用継続給付の給付率が15%から10%に改定されますが、これを受けて在職老齢年金も改定されます。
老齢厚生年金と高年齢雇用継続給付を併給している場合は、前章に倣って老齢厚生年金を減額した上で、標準報酬月額に4%を乗じて得た額をさらに減額します。なお今回は、給付率の変更(15%→10%)に伴い、減額率も2/3(6%→4%)に調整したということです。
特別支給の老齢年金も調整対象です
老齢厚生年金は65歳から支給されますが、受給権者の生年月日によって60歳〜64歳にかけて段階的に受給権が発生する特別支給の老齢厚生年金も減額調整の対象です。これは昭和61年の年金改革によって、年金の支給開始を60歳→65歳に引き上げたことへの激変緩和措置です。
制度改革の過渡期にいる年代の人たちは、若い頃は60歳になったら老齢厚生年金を貰えると信じて保険料を納めてきたのですが、定年に近づいたタイミングでの法改正により、年金の支給開始が65歳に引き上げられてしまったため、つなぎの年金を特別支給するということです。
雇用保険のちがいに注意しましょう
高年齢雇用継続給付は、60歳〜65歳までが支給対象ですので、在職老齢年金によって老齢厚生年金が減額調整されるのは、前述の特別支給の老齢厚生年金の受給者のみです。なお65歳以上の失業手当である高年齢求職者給付金は、在職老齢年金の調整対象にはなっていません。
一方で65歳未満の失業手当である基本手当を受給している場合は、老齢厚生年金は全額支給停止されます。これは高年齢求職者給付金は30〜50日分を一時金で支給しますが、基本手当は失業者の年齢や雇用保険の加入期間に応じ、最大で360日間にわたり支給されるためです。
人事担当者は自社の該当者チェックを
自社に老齢厚生年金を受給している労働者がいる場合には、今回の改定についてご本人へ説明しておくとよいでしょう。なお特別支給の老齢厚生年金は、男性であれば昭和36年4月1日以前生まれ、女性であれば昭和41年4月1日以前生まれが、支給対象となっています。
またサラリーマンの老齢年金は2階建て年金(国年+厚年)と言われますが、1階部分の老齢基礎年金(国民年金)は、在職老齢年金の調整対象にはなりません。老齢を支給事由としない障害厚生年金や遺族厚生年金なども、在職老齢年金の調整対象外です。
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