
賃金計算を委託する際はご注意を
私は20年以上にわたって人事部で働いた後、社労士として開業しました。人事部時代にはたくさんの社労士の先生方と一緒にお仕事をさせて頂きましたが、長年「依頼する側」だった私が、今度は「受任する側」になってみて初めて気づいたことがあります。
社労士というと、多くの方は「労働法令や社会保険の手続きの専門家」というイメージをお持ちでしょう。確かに就業規則の作成代行や各種助成金の申請代行などは社労士の独占業務です。その一方で、人事労務の分野であっても、社労士が取り扱えないものもあります。
例えば年末調整の税務申告です。賃金計算の代行業務は社労士の重要な収入源ですが、年末調整における「税務判断」は税理士の独占業務とされており、社労士が関与できるのは12月の賃金計算まで。総括たる法定調書は実務指導も含めNG、という微妙な線引きがあるのです。
労使関係における社労士の立ち位置
もう一つ興味深いのが、労働組合との団体交渉における社労士の立場です。私はある法人の人事部で働いていた時に、何度も団体交渉を経験しました。しかし平成17年の社労士法改正まで、社労士は労務管理のプロでありながら、労使協議の場には介入できませんでした。
この背景には弁護士法の「非弁行為」(弁護士以外が報酬をもらって他人の代理行為をすること)に抵触するかどうかという問題があります。つまり社労士が経営者の代弁者として労使協議に同席することは、弁護士法違反になるのではないか?ということです。
これについて全国社会保険労務士会連合会は、社労士法に定める社労士の責務は「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上」であり、これにもとづいて労働法令や社会保険制度の円滑な実施に寄与するのが社労士の仕事なので、そもそも非弁行為は生じ得ないという認識です。
「三方よしの人事」の伝道師でありたい
私が社外人事顧問サービスを受任する際は、あくまで労使中立の立場での公正公平なアドバイスに徹し、使用者の代理人として従業員と交渉したり説得したりすることはできない旨を明確にしています(本来、社内の人事部もそうであって欲しいものですが…)。
かつては「戦う社労士」「人罪の辞めさせ方教えます」「モデル就業規則は使うな!」などといった刺激的なキャッチコピーを掲げる社労士も散見されましたが、今ではそうした労使対立を煽るような過激な表現は、懲戒処分の対象となる可能性が高いようです。
私自身は、人事部トップとして労組と対峙した経験もあれば、パワハラ経営者の標的にされて地域ユニオンに助けられた経験もある珍しいタイプの社労士です。ゆえにこの経験を活かし、経営者よし、労働者よし、そして社会よしの「三方よしの人事」をモットーとしています。
「いい年して理想論など…」と一笑に付されそうですが、その道の専門家が理想すら語らなくなったら、働きかた改革なんて盛り上がるはずもありませんよね…。54歳の駆け出し社労士、明日も頑張って参ります。
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