
これまで多くの経営者から勤怠管理の相談を受けてきましたが、残業について都市伝説のような誤った認識が流布されているようです。そこで経営者の皆様が流説に惑わされてコンプラ違反を犯してしまわぬよう、特に誤解の多かった5つの事例をご紹介します。
誤解1. 就業前準備や後片付けは社内儀礼!?
誤解:「始業時刻より早く出勤し、着替えを終え、職場の清掃を済ませてから業務開始するのは社会人としての常識。終業後はきちんと後片付けしてから退勤するのが職場に対するマナー。これらは道徳の範疇なので、労働時間には含まれず、無給で当然だ。」
正解:労働時間とは、使用者の管理監督下にある時間を指し、制服への着替えや、始業前・終業後の後片付けを行う時間は勤務に付随する労働時間とされます。これらの時間が所定外であれば残業代を支払い、法定外労働時間なら割増賃金の上乗せも必要です。
誤解2. 職場の懇親会や研修会は私事扱い!?
誤解:「職場の懇親会は社員間の親睦を深めるためのもの。また休日や始業前・終業後の研修会は本人の自己研鑽の一環なので、労働時間に含まれない。日本は伝統的に職場の和を重視しており、自己研鑽は本人のためなので、残業代を払えなどそもそも人としてどうなのか。」
正解:職場の懇親会や所定時間外の研修会について、個々人の自由な判断で参加の可否を決められる場合には労働時間には該当しません。しかし、全員参加を義務付ける場合には労働時間とみなされ、残業代の支払いが必要となります(私的な倫理観と公的ルールは異なる)。
誤解3. 固定残業代なら残業させホーダイ!?
誤解:「うちの会社は毎月○万円の固定残業代を支払うことにしているため、それ以上の残業代は支払う義務がない。社員には雇入時に固定残業代について説明しており、全員にきちんと納得してもらっている。なにか問題でもあるのか?」
正解:固定残業代が何時間の残業に相当するのか、また実際の残業が固定残業時間を超過した場合に、超過分の残業代をどう計算するのか、就業規則等に明記していなければ違法です。また労働基準法は、労使が合意していても、法令に反する労働契約は無効としています。
誤解4. 管理職なら無条件で残業代不要か!?
誤解:「ウチの会社では、店長は管理職扱いなので、残業代も休日出勤手当も支給していない。そもそも労働基準法によると、管理職は労働時間管理の対象外だから、タイムカードなどで管理職の出退勤を記録する義務もない。」
正解:管理職かどうかは権限と報酬の実態で判断されます。店長であっても他の従業員と同様に勤務シフトで働いている場合は「名ばかり管理職」とみなされます。なお労働安全衛生法は、過重労働による健康障害防止のため、管理職にも出退勤の記録を義務付けています。
誤解5. 副業者の割増手当は副業先が負担!?
誤解:「当社では従業員の副業を認めているが、主業はあくまでもウチの会社なので、法定外労働時間が発生した場合の割増賃金(+25%)は、副業先が負担するのが筋ではないか?」
正解:労働者が副業する場合、主業と副業の労働時間を通算してその日の法定外労働(8時間超過)の有無を判断します。通算は労働契約を締結した順で行い、法定外労働が生じた場合は、主業か副業かに関係なく、後から労働契約を締結した勤務先が割増賃金を負担します。
なお残業時間の賃金は、当然ながら残業をさせた勤務先に支払い義務があります。2つの勤務先がそれぞれ残業をさせたことによって、一日の労働時間が法定労働時間を超えてしまった場合は、後の時刻に残業をさせた勤務先が、法定外労働時間にかかる割増賃金を負担します。
まとめ
節税方法を熱心に勉強する経営者は少なくありませんが、労働法令を理解している経営者は少ないのが実情です。労働力すなわちマンパワーこそ事業収益の源泉です。そんな労働力のトリセツを知らずして、ビジネスゲームで勝利するのは無理ゲーではないでしょうか?
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