和食の名店が廃業してしまった…



私は毎週木曜日にハローワーク札幌東の3Fで雇用保険電子申請相談コーナーを開設させて頂いており、本記事の投稿日はその当番日でした。ところでハローワークに向かう途中、朝の通勤ラッシュで混み合う地下鉄の車中でショッキングなニュースを目にしました。それは円山の有名な某和食料理店の運営会社が経営破綻したというものです。
ちょうど一年前に、私は系列のスープカリー店で相方と娘の3人で会食したことがあります。ミシュランガイドに掲載された実力派たる和食料理店の系列らしく、スープカリーという異なるジャンルの料理ながら、和の食材や和風テイストの食器をとりいれた独自のスタイルは私たちを魅了しました。そのうち再訪したいと思っていただけにとても残念です。
料理の腕前と経営手腕は別の問題
私は件の和食料理店で食事をしたことはありませんが、系列のスープカリー店で提供された繊細で上質なメニューから類推するに、腕利きの料理人を揃えた一流店だったのではないかと思います。しかし今回の一件は、料理の腕前と経営手腕とは全く別問題であることを示唆しています。恐らく有能な参謀役が社内にいなかったのでしょう。
飲食業界では卓越した調理技術と自身のカリスマ性をウリに起業する料理人は珍しくありません。しかし料理と接遇だけでお店を経営してゆくことはできないのは自明の理です。経営にはヒト・モノ・カネを調達し、巧みに運用するスキルと、これらを投入すべき領域を見極めるマーケティングの知見が不可欠であり、これらは厨房でのそれとは全く異なるものです。
事業の多角化は難易度がとても高い
端的に申し上げると、事業を成功させるにはマーケティング分析を駆使して有望な市場をピックアップし、ヒト・モノ・カネを調達してその市場に投入し、可能な限りリターンの極大化を図ればよいのです。しかし多店舗展開すると、いくら卓越したカリスマ経営者であっても、全ての現場のヒト・モノ・カネを完璧にコントロールするのは至難の技です。
なお件の企業に関しては「急速な多角化を進める中で不採算店舗が発生し、資金繰りが悪化した」と報じられています。多角化とは既存の事業とは異なる分野に参入することですが、参入する分野のノウハウが十分でないこともあり、M&Aでもしなければ急速な多角化は無謀です。多角化すれば事業が複雑化し、コントロールの難易度も格段にアップします。
部下を育てて自分の分身をつくれ!
したがって多店舗化と多角化には経営者の分身を育成して事業ユニットごとに配置し、事業の管理を任せる必要があります。これを「スパン・オブ・コントロール」といいますが、スパン・オブ・コントロールは組織マネジメントの5大原則のひとつであり、一人のリーダーが管理できる部下の数には限界があるので、部下に権限委譲せよというものです。
しかし注意すべきはヒト・モノ・カネの管理の良し悪しは、結局ヒト次第ということです。つまりヒトを働かせるための「ルール(就業規則)」を整備し、ルールを適正に運用できる「仕組み(組織体制)」を構築し、ルールと仕組みに則って就労できる「ヒトの育成(人事評価)」を行うことが、経営者が部下に権限委譲するための前提要件となります。
手遅れになる前に専門家に相談する
飲食業のような対面サービスを主軸とした労働集約型産業は、人事マネジメントの巧拙が経営の良し悪しに直結しますので、人事マネジメントは飲食店経営の生命線といっても過言ではありません。昨今はコンプライアンスに対する社会の目が厳しくなり、また就労の価値観や雇用形態の多様化によって、師弟関係だけでは適正な人事マネジメントは難しいと思われます。
一方で多くの飲食店は小規模事業なので、経営管理に精通したスタッフを自前で抱えることは困難でしょう。そんな時は人事管理であれば我々社労士、財務会計なら税理士など社外の専門家にぜひご相談ください。いまどきは専門人材をシェアする時代です。他社で勤務する専門職に副業でのコンサルティングを依頼することも一考の価値ありでしょう。


