
違法な人事関連サービス事業者が多すぎる
社労士事務所を開設して1年半が経過しましたが、SNSやホームページの問い合わせフォームを通じて毎週のように多分野の事業者様から協業のご提案を頂いております。ただし明らかに法令に抵触している案件も少なからずあり、注意喚起も兼ねて本記事を投稿しました。
人事法令違反の多くは違反を行った事業者のみならず、依頼したユーザーも処罰されます。したがって人事関連サービスを契約する経営者や人事担当者の皆様は、本記事をしっかりご覧いただき、いかがわしい事業者に関与なさらないようくれぐれもご注意ください。
無資格者による悪質な違法ビジネスの事例
事例その1:貴社の採用業務をまるっとお任せください!
某人事コンサルティング会社が「求人募集から採用選考、採否の通知までまるっと当社が代行します!」とホームページで謳っていた事例です。しかしこの事業者のサイトには求人募集および職業紹介事業にかかる厚生労働大臣の許可番号が一切表示されていませんでした。
求人募集やスカウトメールの送信、あるいは面接や筆記試験などをビジネスとして代行する場合は、職業安定法に基づき厚生労働大臣の許可や届出が必要です。もしこれに違反した場合、最高で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑という厳しい刑罰が科されます。
なお無資格者がビジネスとして、労働法令や社会保険に関する書類を作成したり官公署への提出を代行したりすることも違法です。就業規則の作成を請け負い社労士法違反で摘発されるケースが多いですが、研修や人事評価の規程も就業規則の一部ですのでご注意願います。
事例その2:当社は社労士が助成金申請を行うので安心!
SNSを通じて当事務所に「助成金申請代行業務を下請けしませんか?報酬は1件につき5万円です。」と提案してきた事例です。この会社は社労士事務所でも社労士法人でもない一般の事業者であり、ワンストップサービスをウリにした人事コンサルティングを標榜しています。
しかし社労士法第23条の2は、社労士が社労士以外の者の下請けとして、社労士の独占業務を行うことを禁じています。これに違反した事業者(元請け)は1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、受託した社労士は営業停止等の行政処分が科されることになります。
タチの悪いことに、この会社は自社のホームページで社労士の募集求人も行っていました。雇った社労士に顧客の人事手続きを代行させる腹づもりなのでしょうが、そもそも無資格者に雇用された社労士が行えるのは、勤務先の従業員に関する人事手続きに限られます。
事例その3:クライアントの人事戦略を担ってください!
最近あった事例です。これもSNSを通じて当事務所に「弊社クライアントの経営トップのもとで人事戦略を担って頂けませんか?」と打診してきたものです。問題なのは業務請負契約にも関わらず、月150~180時間の就労義務があり、時給5,000円で報酬を計算する点です。
業務請負契約とは、労働時間ではなく請け負った業務の成果物に対して報酬が支払われるものです。委託元から指示命令を受けて業務を遂行し、労働時間に応じて賃金が支払われるようなものはいわゆる「偽装請負」であり、労働契約逃れを目的とした犯罪行為です。
ちなみにこの会社のホームページには人材紹介事業や労働者派遣事業の許可番号は掲示されていません。業務委託を前提としていることからビジネスマッチングを装っているのかもしれませんが、実態に鑑みて職業安定法および労働者派遣法違反であることは明白です。
人事コンサルティングを安直に考えるな
違法な人事関連サービス事業者に共通しているのは、人事コンサルティングはハードルが低いと勘違いしていると思われる点です。キラキラワードをちりばめた社名とサービスを掲げ、ワイガヤとまるで学校祭のノリで、無邪気に法令を飛び越え好き勝手やっている印象です。
そもそも労働法令にたくさんの規制や罰則が存在するのは、歴史的に繰り返されてきた「人身拘束」「人身貸与」「強制労働」「中間搾取」という人権侵害から労働者を守るためです。このような背景も知らず軽薄に人事を語る輩に対し、人事のプロとして憤りを禁じえません。
複式簿記を習得しなければ入門すらできない会計分野と異なり、人事分野は雑多な分野から多様な人たちが参入していますが、人事コンサルタントを名乗る事業者の質はあまりにも玉石混交であるというのが、長年人事部でユーザーとして事業者と接してきた私達の感想です。
ハズレ・コンサルを掴まないためには?
人事コンサルティングは理論と実践のバランスが重要です。具体的で実効性ある本物のコンサルティングやアドバイザリーは、労働法令や社会保険制度、人事マネジメント理論と人事管理の現場における豊富な実践経験の掛け算によってのみ提供することが可能です。
しかし現実には、公的団体のセミナーですら、法令や統計の裏付けの乏しい経験談を振りかざし、いい加減な講釈を垂れている講師を見かけることは珍しくありません。したがって人事コンサルタントを選ぶ際は、まず社労士資格の有無を確認することを推奨します。
社労士であれば法令違反のリスクは回避できます。ただし社労士の専門知識とコンサルティング・スキルは全く別物です。同業の会合などで感じるのですが、コンサルティング以前の問題として話し合いのファシリテーションすらままならない方も珍しくありません。



