女性活躍推進事業とはなにか?
女性活躍推進事業の概要と目的
女性活躍推進事業は、特に中小企業を主な対象として、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進するために、厚生労働省が実施する支援事業です。この事業の背景には、2016年(平成28年)4月に全面施行され、令和7年の改正を経て令和18年3月31日まで延長された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」があります。
本事業の主な目的は、個別企業の雇用管理状況に応じたコンサルティングなどを通じて、自社の課題を把握し、それに基づいた適切な取組や目標達成の手順を整理することです。具体的には、男女間賃金差異の要因分析や解消に向けた取組、女性管理職比率の向上、そして女性の正規雇用における「L字カーブ」の解消を目指しています。これにより、企業における実際の行動変容を促し、わが国全体の女性活躍を一段と進展させることを目指しています。
令和8年度の本事業の実施要領
令和8年度の事業実施期間は、令和8年6月下旬頃から令和9年3月までを予定しています。この事業の実施主体は厚生労働省であり、運営の実務を担う事務局は、厚生労働省より委託を受けた株式会社三菱総合研究所が務めています。同社が事務局となり、厚生労働省から委嘱された女性活躍推進アドバイザーを、要望のあった企業に派遣します。
事務局は、企業からの申し込みを受け付けた後、各企業の地域や課題、規模、アドバイザーの専門性などを考慮して、最適なアドバイザーとのマッチングを行います。事業の成果目標として、コンサルティングを受けた企業の8割以上が「自社の課題解決の参考になった」と回答することを目指しており、実効性の高い支援体制が整えられています。
女性活躍推進アドバイザー
女性活躍推進アドバイザーの派遣
本事業の核となるのが、女性活躍推進アドバイザーによる個別コンサルティングです。アドバイザーは、社会保険労務士や中小企業診断士などの国家資格を有し、かつ事務局が実施する必須研修を受講した50名ほどの専門家達で構成されています。当事務所の代表である山口も令和8年度の女性活躍推進アドバイザーのひとりです。
支援は、アドバイザーが直接企業を訪問する個別訪問、またはZoomなどを用いたオンライン会議のいずれかから選択可能です。1企業に対して原則として3回の面談が無料で提供され、各回1時間程度のアドバイザリーが行われます。専門家が伴走することで、社内リソースだけでは解決が難しい課題に対しても、客観的な視点から具体的な助言を得ることができます。
アドバイザリーによる支援内容
アドバイザーによる支援メニューは、制度の理解から実務対応まで多岐にわたります。
- 一般事業主行動計画の策定・改定支援:現状の人材構成や課題を分析し、企業規模や業種に応じた実行可能な目標設定と取組内容の整理を支援します。
- 男女間賃金差異・女性管理職比率の公表と要因分析:2026年(令和8年)4月から義務化の対象が拡大されたこれらの項目について、算出方法の解説や、公表に際しての説明欄(注釈・説明欄)の活用方法を助言します。
- 「えるぼし認定」等の取得支援:優良企業の証である「えるぼし」や「プラチナえるぼし」、さらに新設された女性の健康支援に関する「えるぼしプラス」などの取得に向けた要件の確認や申請手続きをサポートします。
- 公的ツールの活用助言:後述する「女性の活躍推進企業データベース」への登録方法や、男女間賃金差異分析ツールの使い方の指導を行います。
- 情報提供:公共調達における加点評価などのインセンティブや、同規模・同業種の他社事例の紹介など、取組を加速させるための情報を提供します。
なぜ女性活躍を推進するのか?
マクロ的理由(社会経済情勢)
社会経済情勢という大きな視点で見ると、日本は急速な少子高齢化と人口減少に直面しており、将来的な労働力不足が深刻な懸念事項となっています。このような中で、持続的な経済成長を実現するためには、労働生産性の向上と、多様な人材の労働参加を促すことが不可欠です。
また、国民の需要が多様化し、グローバル化が進展する中で、企業の競争力を高めるためには、組織内の多様性(ダイバーシティ)を確保し、市場環境の変化に柔軟に対応できる体制を構築しなければなりません。女性がその個性と能力を十分に発揮できる社会の実現は、男女の人権が尊重されるという基本原則に加え、わが国全体を豊かで活力あるものにするために必要不可欠な国家戦略なのです。
ミクロ的理由(職場や労働者)
個別の企業や労働者の視点では、女性活躍の推進は人材の確保と定着という大きなメリットをもたらします。採用や育成に多大なコストを投じた女性社員が、結婚や出産などのライフイベントを経て能力を高めながら継続して就業できる環境を整えることは、企業にとって損失を防ぐだけでなく、社員のモチベーション向上に直結します。
また、現場の管理職が「女性は家庭を優先するだろう」といったアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を排除し、性別に関わらない公正な評価や登用を行うことは、職場全体の活性化につながります。さらに、女性特有の健康上の特性(月経、妊娠・出産、更年期など)に配慮した「健康経営」の視点を取り入れることで、すべての労働者が健康でいきいきと働ける職場環境が実現し、結果として組織全体の生産性が向上します。
女性活躍推進事業によって得られるもの
どのような問題をどのように解決するのか?
本事業は、企業が直面している具体的な「壁」を解決へと導きます。例えば、女性の採用が少ない、出産を機に退職する割合が高い、管理職に女性がいないといった問題です。
- 自社の状況の「見える化」:アドバイザーの支援により、自社のデータを基礎項目(採用割合、勤続年数、労働時間、管理職比率、賃金差異)に沿って分析し、課題を客観的に特定します。
- PDCAサイクルの確立:単なる制度対応にとどまらず、一般事業主行動計画の策定、社内での改善活動、効果の測定と結果の公表というサイクルを回すことで、実質的な職場環境の改善を促します。
- 意識改革:アンコンシャス・バイアスの解消に向けた啓発や管理職研修のアドバイスを通じて、女性の活躍を阻む職場風土を根本から見直す手助けをします。
問題が解決するとどんなメリットがあるのか?
問題が解決し、女性活躍が進展した企業には多くのメリットがもたらされます。
- 優秀な人材の確保:女性が活躍し、働きやすい職場であるという情報を「女性の活躍推進企業データベース」等で公表することで、就職活動中の学生や求職者への強いアピールとなり、採用競争力が高まります。
- 企業イメージの向上:「えるぼし認定マーク」を取得し、商品や名刺、求人票に表示することで、社会的な信頼性が向上します。
- 経済的インセンティブ:認定企業は、公共調達における加点評価や、日本政策金融公庫による低利融資制度(働き方改革推進支援資金)の対象となるなどの優遇措置を受けられます。
- 経営の安定と成長:多様な人材が活躍することで自社においてイノベーションが促進され、労働生産性の向上を通じて、企業の利益率や価値の向上につながることが期待されています。
本事業を通じて、令和8年度に女性活躍推進の新たな一歩を踏み出し、企業の持続可能な成長を実現しましょう。


