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女性就労の状況と女性活躍関連法令の歴史的変遷

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女性就労の状況と女性活躍関連法令の歴史的変遷

女性就労と活躍推進を巡る法令の変遷

日本における女性の社会進出は、雇用の機会均等から始まり、現在は「個の能力の最大化」という新たなフェーズへと移行しています。この変遷は単なる法整備の積み重ねではなく、働き方の構造改革そのものでした。

20世紀後半〜2010年代初頭:均等確保と就業継続の模索

1985年に「男女雇用機会均等法」が制定されたことで、募集・採用、配置・昇進に至るまで、男女の均等な機会と待遇の確保が法的に推進され始めました。続いて1999年には労働基準法が改正され、それまで女性に課されていた時間外労働や休日労働、深夜業の制限が解消され、これにより、法制度上は男性と同等の働き方が可能となったのです。

しかし当時の主要課題は、出産・育児を機に離職する女性が目立つ「M字カーブ」現象(後述)の解消であり、第1子出産後の就業継続率は約4割にとどまっていました。また、職域の分離や教育訓練の機会格差も根強く残っていました。

2015年〜2021年:女性活躍推進法の誕生と定着

2015年に制定され、2016年に全面施行された「女性活躍推進法」は、企業に対し、状況把握、課題分析、行動計画の策定・届出、情報公表を義務付ける画期的な法案です。

当初の対象は常時雇用労働者数301人以上の大企業でしたが、女性雇用者数は着実に増加し、M字カーブの底は上昇しました。しかし、正規雇用に限ると30代以降に割合が低下する「L字カーブ」(後述)が鮮明化し、子育て期の正規雇用継続が新たな経営課題となりました。

2022年〜2025年:対象拡大と男女間賃金差異の可視化

2019年の女性活躍推進法の改正を経て、2022年4月には行動計画の策定義務が101人以上の中小企業へと拡大され、同年7月には、301人以上の企業に対し「男女の賃金の差異」の情報公表が義務化されました。

しかし令和7年時点でも、日本の男女間賃金差異は76.6(男性=100)であり、国際的に見ても依然として大きな格差が存在しています。この主因は、統計的に「管理職比率の男女差」と「平均勤続年数の男女差」であることが判明しており、単なる給与水準の問題ではありません。

2026年以降の展望:健康支援と持続可能な活躍推進

2026年4月からは、101人以上の企業に対しても「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が義務付けられ、また女性活躍推進法の有効期限が2036年まで10年間延長されることが決定しました。

特筆すべきは、月経や妊娠・出産、更年期といった「女性の健康上の特性」への配慮が基本原則に明記されたことです。これに伴い、職場における健康支援に取り組む優良企業を認定する「えるぼしプラス」制度が創設され、2026年10月にはプラチナえるぼし認定要件にセクハラ対策の内容公表が追加されるなど、ハラスメント対策もより強化される予定です。

女性労働力率の構造分析:M字カーブとL字カーブ

日本の女性就労を理解するために不可欠な二つの指標があります。それぞれの特徴と、そこから浮き彫りになる構造的な問題点を整理します。

M字カーブ:就業継続率と底の上昇

厚生労働白書より転載

女性の年齢階級別就業率(または労働力率)をグラフにした際、20代後半と40代後半をピークとし、出産・育児期の30代で低下する「M字カーブ」は、かつての日本的雇用慣行の象徴でした。近年、M字の底は年々上昇しており、グラフの形状は欧州諸国のような「台形」に近づいています。

全年齢階級で労働力率は上昇しており、出産を経ても就業を継続する土壌は整いつつあります。しかし、第1子出産を機に約3割の女性が依然として退職しており、長時間労働を前提とした働き方や、両立を支援する雰囲気の欠如という根本的な壁は残っています。

L字カーブ:正規雇用比率における日本特有の課題

厚生労働白書より転載

就業率の改善とは対照的に、女性の年齢階級別「正規雇用比率」に着目すると、20代後半をピークに30代以降、年齢とともに低下し続ける「L字カーブ」が描かれます。

主要先進国(米・英・独・スウェーデン等)では30代以降も正規雇用比率の大幅な低下は見られないのに対し、日本のみが著しく低下し続ける点は特有の傾向です。これは、一度正規雇用を離れると非正規雇用へ固定化されやすく、復帰のハードルが高いという日本の労働市場の構造的な問題を示唆しています。

賃金格差とアンコンシャス・バイアス

賃金格差のメカニズム

法整備が進む一方で、数値の改善を阻む根深い構造的課題が存在します。たとえば現在の賃金格差(76.6%)の背景には、構造的な要素があります。部長級における女性管理職の比率の低さ(9.3%)は、将来的な賃金上昇を抑制する要因となっています。

また、L字カーブに起因する女性の平均勤続年数の短さは、年功序列的な賃金体系や昇進プロセスと結びつき、結果として男女間賃金格差の固定化を招いています。個人の能力の問題ではなく、企業が提供するキャリアパスの連続性が断絶していることが主因です。

性別役割分担とアンコンシャス・バイアス

日本の職場に根強く残るのが「男は仕事、女は家庭」という固定的な性別役割分担意識です。昭和の頃ならまだしも、令和の時代になっても、いまだ半世紀前の価値観に囚われた経営者や管理職は少なくありません。

さらに、年配の男性管理職によく見られる「子育て中の女性に重要なプロジェクトは任せられない」といったアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が、女性の配置や育成に悪影響を及ぼしています。これが教育訓練の機会格差を生み、結果として女性のキャリア意欲を削ぐ悪循環となっています。

持続可能な企業成長へ向けた戦略的アプローチ

両立からキャリアアップ支援へ

2026年以降の改正を機に、企業は「両立支援」というフェーズから、「個の能力の最大化」へと戦略をシフトすべきです。

制度を整えるだけの段階は終了しました。これからは、育児や介護など時間制約のある社員であっても、その能力を発揮できるような「時間あたり生産性」を重視した評価制度への移行が不可欠です。

2036年を見据えた企業変革の必須要件

女性活躍推進は、もはや単なる福利厚生やCSR活動ではなく、企業が持続的に成長するための経営戦略の中核です。

セクハラを許さない職場風土の醸成や柔軟な働き方の導入、性別に囚われない公正・公平な人事評価制度の確立。これらを統合的に推進することが、2036年までの長期的な成長を支える唯一の道となります。私たちは、この変革期を単なる法対応の機会とするのではなく、日本企業の組織能力を底上げする絶好のチャンスと捉えるべきです。

多くの企業がいまだ前時代的な男尊女卑の価値観から脱却できない状況において、女性活躍推進に前向きに取り組もうという企業姿勢は、同業他社に対する人事戦略上の大きなアドバンテージとなるでしょう。最後にダーウィンの「強い者が生き残るのではない。変化に対応できた者だけが生き残るのだ…」という名言で締め括りたいと思います。


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