はじめに
女性活躍推進法への対応や、自社のダイバーシティ経営を一段上のステージへと引き上げるためには、国が提供している様々な公的ツールを効果的に活用することが近道です。ここでは、現状把握から情報発信、意識改革まで、実務に役立つ主要なツールを紹介します。
なお本記事でご紹介した5つの便利な公的ツールは、本記事最後の「女性活躍推進法特集ページ(厚生労働省)」サイトより、すべて入手できます。
女性の活躍推進企業データベース

主な機能と活用するメリット
女性の活躍推進企業データベースは、厚生労働省が運営する、企業の女性活躍に関する「一般事業主行動計画」と「実績情報」を集約した国内最大級のプラットフォームです。主な機能として、自社の取組や数値を外部へ公表する機能に加え、業種、地域、企業規模などの条件を指定して他社の情報を検索・閲覧できる機能があります。
これを活用する最大のメリットは、「採用力の強化」です。就職活動中の学生や求職者は、このデータベースを通じて企業の「働きやすさ」や「活躍の度合い」を比較検討するため、積極的に情報を開示することで自社の魅力を強力にアピールできます。
また、社内的なメリットとして、数値の「見える化」によるベンチマークが挙げられます。同業他社や同規模企業の数値を参照することで、自社の立ち位置を客観的に把握し、次なる目標設定のヒントを得ることが可能です。さらに、登録企業には情報の更新時期がメールで通知されるため、公表義務の更新忘れを防ぐ実務的なサポート機能も備わっています。
ご利用方法
利用は無料です。まず、公式サイト(本記事の最後にURLを掲載)にアクセスし、法人番号などを用いて自社の基本情報を登録し、ログインIDとパスワードを取得します。ログイン後、マイページから「データ公表」または「一般事業主行動計画の公表」を選択し、算出された実績値や作成した計画のPDFファイルをアップロードします。
情報の公表は、おおむね年1回以上の更新が求められており、最新の数値を掲載し続けることが望ましいとされています。操作に不慣れな担当者向けには、詳細な入力操作マニュアルや、入力内容の事前準備に使える「入力準備シート」も提供されています。
男女間賃金差異分析ツール

主な機能と活用するメリット
男女間賃金差異分析ツールは、2022年から義務化の対象が拡大した「男女の賃金の差異」について、その要因を詳細に分析するためのExcelベースの支援ツールです。
自社の給与データや従業員情報を入力するだけで、正規・非正規といった雇用形態別、あるいは役職別、勤続年数階級別の賃金差異を自動で算出できます。このツールの白眉は、自社の数値を国が保有する同業種・同規模企業の平均値(参考値)と比較できる点にあります。
活用するメリットは、単なる数値の算出にとどまらず、「なぜ差異が生じているのか」という根本原因を特定できることです。例えば、「管理職比率の低さ」が原因なのか、「残業時間の差」が影響しているのかを可視化することで、情報公表時の『注釈・説明欄』に説得力のある説明を記載できるようになり、求職者や投資家からの誤解を防ぐことができます。
ご利用方法
厚生労働省の「女性活躍推進法特集ページ(本記事の最後にURLを掲載)」からツール本体(Excelファイル)をダウンロードして使用します。
利用手順は2通りあります。より詳細な分析を望む場合は、従業員ごとの性別、役職、勤続年数、給与額、賞与額、残業時間などの生データを「入力シート」に貼り付けます。これにより、詳細な要因分析レポートが生成されます。すでに自社で集計済みの数値がある場合は、項目ごとの数値を直接入力して参考値と比較するだけの簡易な利用も可能です。
アンコンシャス・バイアス研修とチェックリスト

主な機能と活用するメリット
アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)とは、過去の経験や周囲の環境によって培われた、自分では気づかない物事の捉え方の偏りのことです。女性活躍を阻む「目に見えない壁」を打破するためのツールとして、チェックリストと研修動画が提供されています。
チェックリストは、日常の業務シーン(例:展示会の受付やプロジェクトリーダーの選定)を想定した設問に答えることで、自分の中の偏りに気づかせるセルフ診断ツールです。
これらを活用するメリットは、経営層や管理職の意識変革を促し、「公正な人事評価と人材登用」を実現できる点にあります。例えば、「女性は家庭を優先するだろうから、責任ある仕事は望まないはずだ」といった善意による配慮(慈悲的差別)が、実は女性のキャリアアップを阻害している事実に気づくことができます。
組織全体のバイアスが解消されることで、多様な人材が能力を最大限に発揮できる風土が醸成されます。
ご利用方法
厚生労働省の特集ページ(本記事の最後にURLを掲載)から「アンコンシャス・バイアスチェックリスト」をダウンロードし、自己診断や社内研修のワークシートとして活用します。
また、YouTubeの厚生労働省公式チャンネルでは、人事労務担当者や管理職向けの約15分〜20分の研修動画が公開されています。社内勉強会で動画を視聴し、その後にチェックリストを用いてディスカッションを行うことで、より深い理解と行動変容へとつなげることができます。
ロールモデル

主な機能と活用するメリット
女性社員がキャリアの将来像を描くための指針として、国は「ロールモデル紹介マニュアル・事例集」を提供しています。これには、社内でどのようにロールモデルを選定し、発信すべきかのノウハウが凝縮されています。
活用するメリットは、女性社員が抱く「将来への不安」を払拭し、モチベーションを高められることです。特に身近に女性管理職がいない職場では、「自分もあのように活躍できる」という具体的なイメージを持つことが難しく、離職の要因にもなりかねません。
マニュアルに沿って、育児と両立しながら活躍する社員や、専門性を極める社員など、多種多様なパターンのロールモデルを紹介することで、一人ひとりの社員が「自分に合ったパーツ」を参考にできるようになり、自律的なキャリア形成を支援できます。
ご利用方法
「メンター制度導入・ロールモデル紹介・地域ネットワークへの参加マニュアル・事例集」をダウンロードして活用します(本記事の最後にURLを掲載)。
具体的には、マニュアル内の「ロールモデル発見・紹介チェックリスト」を使い、社内の隠れた逸材を発掘します。その後、社内報でのインタビュー掲載、イントラネットへの動画配信、あるいは昇格者向け研修でのパネルディスカッションへの登壇など、自社の文化に合った方法で露出を増やします。社内に適任者がいない場合は、グループ会社や他社のロールモデルを招く手法も有効です。
地域ネットワーク
主な機能と活用するメリット
自社内だけでは解決できない課題や不足しているリソースを補うためのツールが、地域ネットワークです。自治体などが主催する女性活躍推進の勉強会や、異業種交流会への参加がこれにあたります。活用するメリットは、社内にはない「多様な視点と外部のメンター」を得られることです。
他社の先進的な取組事例を直接聞くことで、自社の制度改善に活かせるほか、参加者同士で悩みを共有することで、孤立しがちな女性リーダーの精神的な支えとなります。また、社員が外部で刺激を受けることで、社内に新しい風を吹き込み、組織の活性化にもつながります。
ご利用方法
都道府県や市区町村の男女共同参画センター、商工会議所などが実施している「女性リーダー育成研修」や「ダイバーシティ勉強会」をリサーチし、社員を派遣します。
マニュアル(本記事の最後にURLを掲載)には、仙台市の「Radi-Lady」や「京都ウィメンズベース」といった成功事例が掲載されており、ネットワークをどう構築し、継続させるかのヒントが示されています。会社として参加費用や受講時間を支援することで、社員の積極的な参加を後押しすることが重要です。
これまでにご紹介した5つのツールやマニュアルは、すべて厚生労働省の「女性活躍推進法特集ページ」からご入手いただけます。


