はじめに
女性労働者がその個性と能力を十分に発揮できるよう、労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、女性活躍推進法などの様々な法令が、事業主の義務や女性労働者の権利を定めています。本記事では、事業主が守るべき事項や女性が受けられる労働法令および社会保険制度上のメリットなどをまとめています。
事業主が行ってはいけないこと(禁止事項)
法令により、女性であることを理由とした労働条件の差別や、女性労働者のライフイベントに伴う不利益な取り扱いは厳格に禁止されています。
- 男女差別待遇の禁止(労働基準法):事業主は、労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取り扱いをしてはなりません。また、国籍、信条、社会的身分を理由とした労働条件全般の差別も禁止されています。
- 雇用形態・各段階での差別禁止(男女雇用機会均等法):募集、採用、配置(業務の配分や権限付与を含む)、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種や雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新において、性別を理由とした差別は禁止されています。
- 妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法):婚姻、妊娠、出産、産前産後休業や育児休業の取得などを理由とした解雇その他不利益な取り扱い(降格、減給等)は禁止されています。妊産婦の解雇は、事業主が妊娠・出産以外の理由であることを証明しない限り無効となります。
- ハラスメントの放置(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法):職場におけるセクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント)を防止するため、事業主は雇用管理上の必要な措置を講じなければなりません。
- 放射線業務の制限(労働安全衛生法):医療機関で放射線業務に従事する女性の医師や診療放射線技師の実効線量を、3ヶ月で5ミリシーベルト以下、妊娠判明後は出産まで内部被ばく1ミリシーベルト、腹部表面2ミリシーベルト以内とする制限があます。
- 男女別休憩室の設置義務(労働安全衛生法):多数の女性が働く場では男女別の休憩室の設置が義務付けられています。
事業主が配慮すべきこと・保障すべき権利
さまざまな労働法令において、女性労働者の健康を守り、職業生活と家庭生活の両立を支援するための権利が保障されています。
- 母性保護(労働基準法):
- 産前産後休業:産前6週間(多胎妊娠は14週間)の請求による休業、および産後8週間の強制休業(医師の許可があれば6週間後から就業可)が保障されています。
- 軽易な業務への転換:妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければなりません。
- 労働時間の制限:妊産婦が請求した場合、時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならず、変形労働時間制の適用も制限されます。
- 育児時間:生後満1年に達しない生児を育てる女性は、休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求できます。
- 生理休暇:生理日の就業が著しく困難な女性が請求したときは、休暇を与えなければなりません。
- 母性健康管理(男女雇用機会均等法)
妊産婦が保健指導や健康診査を受けるための通院時間の確保や、医師の指導に基づく勤務時間の変更・軽減等の措置が義務付けられています。 - 育児・介護との両立支援(育児・介護休業法)
- 育児・介護休業:一定の要件を満たす労働者は、原則として子が1歳(最大2歳)に達するまでの育児休業や、家族1人につき通算93日までの介護休業を取得できます。
- 所定外労働・深夜業の制限:小学校就学前の子を育てる、または家族を介護する労働者が請求した場合、残業や深夜業を制限しなければなりません。
- 短時間勤務等の措置:3歳に満たない子を養育する労働者のための短時間勤務制度の導入が義務付けられています。
- 女性の健康支援(改正女性活躍推進法)
月経、妊娠・出産、更年期症状などの「女性の健康上の特性」への配慮が基本原則に明記されました。これに取り組む企業は「えるぼしプラス認定」を受けることができます。
女性労働者が受けられる社会保険制度上の措置
社会保険や雇用保険には、就業継続を支える給付制度があります。
- 雇用保険法(※育児を行う男性労働者も対象)
- 育児休業給付金:育児・介護休業法に定める育児休業をした場合に、休業前賃金の67%(181日目以降は50%)が支給されます。
- 出生後休業支援給付金(新設):両親ともに育児休業を取得する場合などに、給付率を13%上乗せし、合計で実質8割の所得保障を実現します。
- 育児時短就業給付金(新設):2歳未満の子を育てるための時短勤務中に低下した賃金の10%を補填します。
- 健康保険法
- 出産育児一時金:出産1児につき原則50万円(産科医療補償制度加入病院で出産した場合)が支給されます。
- 出産手当金:出産のため休業(労働基準法の産前・産後休業)した期間、標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。
- 傷病手当金:業務外の事由により病気や怪我で働けない場合、最長1年6ヵ月間、給与の約3分の2が支給されます(女性に限定されません)。
- 保険料の免除:産前産後休業期間および育児休業期間中は、健康保険料(本人分・事業主分ともに)が免除されます(後者の休業は男性も対象)。
- 厚生年金保険法(産前産後休業関係以外は男性労働者も対象)
- 保険料の免除:産前産後休業期間および育児休業期間中は、厚生年金保険料(本人分・事業主分ともに)が免除されます(後者は男性も対象。免除期間中も保険料を支払ったものとして将来の年金額に反映されます)。
- 時短勤務時の特例:育児のために時短勤務をする場合、保険料は時短によって低下した給与に応じて、一方の年金額は低下前(時短前)の給与に応じてそれぞれ算定します。
これらの法令の遵守は、女性活躍推進に取り組む際の最低限の前提要件として、経営者や人事担当者が特に留意すべきことです。女性活躍推進アドバイザーは社会保険労務士が多数を占めているため、ぜひ本事業のご活用を推奨します。


