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10月から就活セクハラ防止措置が義務化されます

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10月から就活セクハラ防止措置が義務化されます

2026年(令和8年)10月1日より、改正男女雇用機会均等法が施行され、就職活動中の学生やインターンシップ生などの「求職者等」に対するセクシュアルハラスメント(以下「就活セクハラ」)を防止するための雇用管理上の措置が、すべての事業主に対して義務化されます。

本記事では就活セクハラ防止措置を義務化する目的や背景、企業が講ずべき防止措置のチェックリスト、他社での有効な取組事例、および違反時のペナルティや経営的リスクについて、厚生労働省のガイドラインや資料等に基づき解説します。

法改正(2026年10月施行)の目的と背景

就活セクハラは深刻な人権侵害である

就職活動中の学生やインターンシップ生などの求職者等は、採用の合否を握る企業に対して極めて弱い立場にあります。この「圧倒的なパワーバランス(力の不均衡)」を背景に、就活生の尊厳や人格を不当に傷つける性的な言動が行われるケースが多発しています。

特に大手有名企業において立て続けに発生した性犯罪とも呼べる悪質な事件を契機として、就活セクハラを深刻な人権侵害として捉え、法的な防止体制の整備が不可欠であるという声が高まり、今般の法改正に至りました。

就活生の3人に1人がセクハラ被害に

厚生労働省が委託した実態調査(令和5年度)によると、2020〜2022年度に就職活動やインターンシップを経験した男女のうち、インターンシップ中に就活セクハラを一度以上経験した者は30.1%、インターンシップ以外の就職活動中に経験した者は31.9%に上っています。

一方で被害者のうち「泣き寝入りした」と回答した学生がインターン中で14.0%、就活中で11.1%を占めます。主な理由は「何をしても解決にならないと思った(インターン中48.6%、就活中37.9%)」や「就職活動が不利になると思った(インターン中18.9%、就活中17.2%)」であり、学生が声を上げにくい実態が背景にあります。

個人の問題ではなく人事戦略上の課題

就活セクハラを放置することは、被害を受けた学生の心身を傷つける(意欲の減退、不眠、不安など)だけでなく、企業にとっても「社会的信用の失墜」「求職者の減少」「既存従業員の労働意欲の低下や人材流出」といった重大な損失に直結します。

BtoC(会社対消費者)のビジネスモデルで事業を展開している企業の場合、就活セクハラを放置することで人材の確保が困難になるどころか、消費者の不買運動に発展してしまうリスクもあります。特に女性労働者の多い医療業や小売業では経営へのダメージが甚大です。

就活セクハラ防止措置チェックリスト

この章では、厚生労働省の「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント防止指針」に基づき、事業主が講ずべき就活セクハラ防止措置をチェックリスト方式でご紹介します。

A. 事業主の方針等の明確化及び周知・啓発

  • [ ] ① 求職活動等におけるセクハラの内容と、これを行ってはならない旨の事業主の方針を明確にし、就業規則等に規定した上で、管理監督者を含むすべての労働者に周知・啓発しているか。
  • [ ] ② セクハラ行為を行った者については厳正に対処する旨(懲戒規定等)を就業規則等に規定し、労働者に周知・啓発しているか。
  • [ ] ③ 求職活動等に関するルール(面談の時間や場所の指定、実施体制、使用するSNSの種類の指定など、求職者等と面談等を行う際の規則)をあらかじめ策定し、労働者および求職者等に対して周知・啓発(研修やホームページ等での発信)しているか。

B. 相談(苦情を含む)に応じ適切に対応するための体制整備

  • [ ] ④ 求職者等からの相談に対応する窓口(相談窓口)をあらかじめ定め、ホームページやパンフレット等を通じて求職者等に周知しているか。
  • [ ] ⑤ 相談窓口担当者が適切に対応できるよう、人事部門との連携体制を構築し、また対応マニュアルを整備し、担当者研修を実施しているか。
  • [ ] ⑥ ハラスメントが現実に発生している場合だけでなく、発生のおそれがある場合やハラスメントに該当するか微妙な場合(放置すれば求職活動を阻害するおそれがある事案など)であっても、広く相談に対応する仕組みとなっているか。

C. 事後の迅速かつ適切な対応

  • [ ] ⑦ 相談があった場合、相談窓口担当者や人事部門が相談者(求職者等)と行為者の双方から速やかに事実確認を行い、主張が食い違う場合は第三者からも聴取するなど、迅速かつ正確な調査を行えるか。
  • [ ] ⑧ ハラスメントが生じた事実が確認された場合、被害者と行為者を引き離す対応、行為者からの謝罪、相談対応など、被害者に対する配慮の措置を速やかかつ適正に行う仕組みがあるか。
  • [ ] ⑨ 事実確認に基づき、行為者(自社従業員)に対して就業規則等に則った懲戒処分などの適正な措置を講じているか。
  • [ ] ⑩ 事実が確認できた場合、または事実確認が困難であった場合でも、方針の再周知や改めての意識啓発研修など、実効性のある再発防止措置を講じる体制があるか。

D. 併せて講ずべき措置(プライバシー保護・不利益取扱いの禁止)

  • [ ] ⑪ 相談者や行為者等のプライバシー(性的指向やジェンダーアイデンティティなどの機微な個人情報を含む)を保護するため、取扱マニュアルを定め、担当者への研修を行い、保護措置を講じている旨を労働者や求職者等に周知しているか。
  • [ ] ⑫ 労働者が事実関係の確認等の雇用管理上の措置に協力したこと、または労働局へ相談したこと等を理由として、解雇その他の不利益な取扱いをされない旨を就業規則等に規定し、労働者に周知しているか。

内定者と求職者のちがい

内定者(労働契約が締結されたとみなされる者)は、既存の従業員と同様に、通常の職場におけるセクハラ防止措置(男女雇用機会均等法第11条第1項)が適用されます。一方で求職者については、今般の改正法に基づく就活セクハラ防止措置の対象となります。なお就活パワハラ(圧迫面接やオワハラ等)は、就活セクハラ防止措置義務の対象外ですが、就活セクハラ防止措置に準じた措置を講じるよう努めることが望ましいとされています。

他社が実施した取り組み事例の紹介

就活セクハラ防止措置が義務化される前から、すでに自社独自の取り組みを行い、一定の成果をあげている企業の事例が、厚生労働省の「就活セクハラ防止措置企業事例集」に掲載されています。法令遵守にとどまらないハラスメント防止の仕組みづくりが特徴です。

O社(総合建設業・従業員約9,000人)の事例

  • 「リクルート活動における行動規範」の策定と公開: 2019年に行動規範を制定し、採用ホームページやエントリー済みの学生が閲覧する「学生用マイページ」に公開しました。
  • 効率よりも安全を優先した面談ルールの構築: OB・OG面談の場所を「会社施設、学校施設、個室以外の喫茶店・レストラン、会社指定のWEB会議システム」に厳格に制限。またリクルーターが許可なく学生と接触できないよう人事部への事前申請を必須とし、連絡に個人のSNS(LINE等)を使用することを禁じています。
  • 人事部から独立した相談窓口: 採用選考を行う人事部から完全に独立した「ハラスメント対策室」を設置し、学生が「評価への悪影響」を懸念して相談をためらうことがない仕組みを整備しています。

リクルーター制度とは?

リクルーター制度とは、就活生と年齢の近い人事部以外の社員(営業部門や現業部門に勤務するOBやOG)が、職場や仕事の魅力を就活生やインターンシップ制に直接伝えることで、自社への応募を促進することを狙った、いわば採用プロモーション戦術のひとつです。その一方で就活セクハラが性犯罪に発展した事件の大部分がリクルーターによるものです。

S社(製造業・従業員約26,000人)の事例

  • エントリーシート内の学生個人情報の非開示: システム上のエントリーシートを面接官が閲覧する際、住所・電話番号・Eメールアドレスなどの個人連絡先をすべて非表示にするシステムを導入し、面接官が応募者に直接アプローチできるルートを遮断しました。
  • 面接官への事前レクチャーの徹底: 面接に臨む全社員(例年50人ほど)に対し、事前に公正な採用選考(聞いてはならないプライベートや思想・信条などの注意事項)や、高圧的・威圧的な態度をとらないようレクチャーを徹底しています。

違反に対するペナルティと経営的リスク

当局からの是正勧告と企業名の公表

雇用管理上の措置義務を怠り、ハラスメントを放置したことによる法令違反が認められた場合、都道府県労働局長等から助言、指導、又は是正勧告を受けます。事業主がこの是正勧告に従わなかった場合、厚生労働大臣は違反した企業名を公表することができます。

また都道府県労働局からの報告命令に対し、報告を怠る、あるいは虚偽の報告をした場合は「20万円以下の過料」に処されます(男女雇用機会均等法において唯一の過料処分)。

「プラチナえるぼし認定」が失効する

改正男女雇用機会均等法と同日に改正女性活躍推進法が施行され、優良な女性活躍推進企業として認められる「プラチナえるぼし」の認定・維持要件に、「事業主が講じている求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置の内容の公表」が追加されます。

就活セクハラ防止措置を実施し、その内容を女性活躍推進企業データベースで公表していない場合は、同認定を受けることができなくなり、すでに認定を受けている場合であっても、認定を維持できなくなるリスクがあります。

新卒採用活動の難易度が一気に上がる

現在、就活生の間でSNSや口コミサイトを活用した情報共有が極めて活発化しており、就活セクハラ防止措置義務を怠り企業名を公表された場合はもちろんのこと、就活セクハラが行われたことがWeb媒体を通じて拡散されると、就活生から徹底的に忌避されます。

新卒採用が著しく困難になるのみならず、第二新卒などの若手人材全般から敬遠され、自社内における世代交代の新陳代謝が止まり、独自の技術やノウハウ、企業文化の承継が困難になります。いずれ企業そのものが活力を失ってゆくことは想像に難くありません。

民事上の損害賠償請求訴訟のリスク

企業が就活セクハラを軽視し、事実確認が不十分(加害者への聞き取りだけで安易に誤解と判断するなど)だったり、被害者への対応が不適切だった場合、安全配慮義務違反(内定者)や使用者責任(就活生)を問われる可能性が極めて高いです。

これら法令違反(不法行為)が認められた場合、被害にあった就活生等から民事上の損害賠償(逸失利益、慰謝料等)を請求されるリスクを負います。過去の裁判例でも、企業のずさんな対応に対して厳しい不法行為責任が認められています。

就活セクハラは男子学生に対するセクシュアルハラスメントも対象ですが、実態としては女子学生へのセクハラが大部分です。しかし国をあげて女性活躍を推進している現在の社会経済情勢に鑑みて、就活セクハラに寛容な企業姿勢は経営にとって致命的です。

なお就活セクハラ防止対策は、通常の労働者に対する各種ハラスメント防止措置との整合や、就業規則(服務規律・懲戒事項)の改正など、人事制度全般にわたって整備する必要があるため、社会保険労務士等の社外専門家を積極的に活用することを推奨します。

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